コロナ禍で考える『雇われる力』

 

コロナによって労働市場にも地殻変動が起きています。
 

空前の人手不足、売り手市場だった1年前とは一転し、有効求人倍率は1倍を切る勢いで下がり続けています。

来春の新卒内定率も9月末で8割程度の水準です。高いお金を出し求人広告を出しても全く反応がなかった状況も、今は求人を出せば何らかの反応があるとのこと。


「求人を出せば、問い合わせはある。でもね・・・・」


求人を出している会社から、ここ数ヶ月こんなフレーズをよく聞きます。

経験があわない、社風に合いそうもない・・・応募はあるけれど採用となると躊躇してしまう。

1年前の「社内を回すために、人手を採用したい」という「今を補う」フェーズから、「この先一緒になって会社を創っていくため『いい人材』を獲得したい」と「未来への投資」採用に明らかにシフトしているように感じます。

 

一方、労働者側の意識も変化しています。

 

日経HRの調査によると、約8割の人が「コロナ禍を経験し、仕事観についての変化があった」とし、6割近くの人が「転職の意識が高まった」としています。

転職の理由としては、現在の会社や業界の将来への不安や自社のコロナ対応への不満、柔軟な働き方を求める声などが挙げられています。

但し、「転職市場が厳しくなる」と感じている人が8割とかなり高くなっています。

 

また、副業を考え始めた人、キャリアアップの為の学びを始めた人も多くなっています。

注目すべきは20代、30代の若年層がキャリアアップの学びを始めた人が多いことです。

要は「自分の将来を考えると、この会社でいいのか考えあぐねている。でも今すぐではない、時期をみて」といったところではないでしょうか。

 

『エンプロイアビリティ』という言葉があります。


直訳すると「雇われうる能力」となります。

「この会社・職場」限定ではなく『どの会社でも雇われうる能力』のことを指します。いわば、その人が市場の中でどれだけ雇われる「価値」があるかというです。


いつまでも同じ業務や同じ環境にすがっていられないこの先、働く個々人は「エンプロイアビリティ」を意識することもきっと増えていくと思います。

資格があるから、どこの会社にいたからだけではなく、どんな経験を積んで、どんな課題を乗り越えたかがエンプロイアビリティを高めることにつながります。


一方、企業にとっても社員の「エンプロイアビリティ」を高めることが益々必要になってきます。

人の成長の7割は「経験」から成るとのこと。自社の仕事を通じ、社員が成長できる機会になっているか、成長を支える環境を創っているか。社員のエンプロイアビリティの向上は、その企業に成長するための舞台がどれだけ用意されているかに影響されます。

社員任せではなく、企業として考えなければならない課題です。

市場価値の高い人材が育つ土壌が、企業の競争力、人材力の強さにつながっていくのだと考えます。

 

働く人が、他の会社でも充分に活躍でき移れる選択肢をもちながらも、敢えて「自社で働く」ことを選択する。

この会社にいた方が自身の可能性やエンプロイアビリティが高まるから。

そんな相乗効果のある土壌が一番いいのではないでしょうか。働く人も、会社もどちらにとっても。


群馬県よろず支援拠点 薗田直子